智慧の扉

2013年7月号

心の法則と「しゃべり方」

アルボムッレ・スマナサーラ長老

 皆さん経典をご覧になる時に、お釈迦様の「しゃべり方」に注目してみてください。お釈迦様は相手の自由をとことん尊重されます。例えば、怒りの弊害について語る際にも、「怒るなかれ」ではなく、「怒るとどうなるか」を理性的に説明してあげるだけです。ひとが何をするかは本人の自由に任せるのです。
 
 お釈迦様は心の法則を知り尽くしたうえで説法されました。心の法則では、「○○するなかれ」という命令は、「○○しなさい」という逆のメッセージに変わってしまうのです。例えば、日本では厳しく取り締まられている麻薬も、オランダなどでは合法化されており、特に社会問題にはなっていないようです。生命の心は束縛を嫌うので、毒であっても禁止されるとかえって欲しがるのです。もちろん人間は無知だから、麻薬の害については淡々と教えてあげる必要があります。その時も、心の法則を使うのです。子供の喫煙を止めたければ、「早く死にたい人はどんどんタバコ吸っちゃえば!」と煽ってみることです。子供たちは反対に、「絶対、吸うものか」となるでしょう。
 
 心は縛られず自由に活動したいのです。しかし、自分ではどうしたら良いかわからないから、生きる方法を学ぼうとする。しかし、命令されることだけは嫌なんですね。自分で学んで、自分で判断したいのです。世間はその機会を奪っています。つまり、生命の根本的な能力を奪っているのです。だから世の中はどうしようもないことになっています。
 
 私たちはお釈迦様に学んだほうがいいと思います。とくに子供のしつけでは、「○○するなかれ」「○○はダメ」という単語は絶対使わないことです。お釈迦様の「しゃべり方」を真似して子供に接すれば、ダメなこと・悪いことは決してしない人間に育ってくれます。