智慧の扉

2014年10月号

こころの葛藤を発見する

アルボムッレ・スマナサーラ長老

 こころの葛藤とは、簡単に「本音」と「建前」の差であると理解してください。我々は建前で生きているのですが、常に本音と戦わなくてはいけないのです。もしも本音が勝ったらならば、罪を犯すのです。犯罪者になってしまいます。ですから、戦ってください。
 
 そして、こころの葛藤を認めてください。「葛藤がない」と言ったら、もしかすると犯罪者になるかもしれません。ですから、ずっと建前で生きるのです。これは仕方がないことです。建前で生きるためには、本音と戦わなくてはいけない。本音が勝利をしないようにしなくてはならないのです。

 こころが常に戦っていること(葛藤)を発見してみましょう。次に、葛藤は「苦しい」「疲れる」「ストレスが溜まる」ということも発見してみましょう。普通に生きていると、この葛藤って苦しいんだなぁと、建前で生きていると疲れるものだなぁと、その事実を認めればいいのです。みんなに優しい顔をして、ニコニコ笑い、行儀作法がよく、丁寧な言葉を使って、身なりもしっかりして、そうやっていると、結構疲れます。しかし、その葛藤も「そんなものだよ」と認めれば、何となく楽になるのです。

 最後に「葛藤がある限り安らぎはない」と発見しましょう。自分の葛藤を発見し、この葛藤がある限り、そう簡単に安らぎを感じることは出来ないと発見するのです。たとえば、赤ちゃんのいるお母さんが、楽になりたいとか、昼寝したいとか、これはどうしたってあり得ない話です。その事実を認めればいたって簡単です。子供が小さいからまだまだ大変なのだと、そう認めるだけです。

 本音という恐ろしい感情が自分の首を絞めているのです。その悪感情に支配されていることを発見するのです。発見は難しくないでしょう。そのような感情が自分を支配しているから、安らぎも、幸福も経験できないのだと発見するのです。 私を支配しているのは、こんな本音だ、ただの悪感情だと発見して、「だから、こんな不幸になっているのか」と理解すればよいのです。