智慧の扉

2015年4月号

セルフマネジメントの要諦

アルボムッレ・スマナサーラ長老

 生きているなら、幸せになりたいと思うのは当然です。だったら、まずセルフマネジメントが必要です。そのために理解するべき4つのことがあります。
 
 我々が行動・判断する場合は、何でも①「好み(chanda)」にあわせたがるのです。何かを断るときに平気で「いいえ、それは私の好みじゃない」と言うでしょう。ですから、この「好み」という偏見(洗脳)が私たちにはいつも働いています。店を選ぶときも好みがある。服を選ぶときでも好みがある。人付き合いでも好みがあります。
 
 ですから、生命は現実的ではないのです。データで動いてはいないのです。好みで動くのです。これは大きな問題です。そんな簡単には解決できません。住む場所も好みで決めます。客観的なデータに基づくものではないのです。若者が就職先を選ぶときにでも、好みで選ぶということがあるのです。
 
 特に危険なのは、判断するときです。判断するときに好みで決めてしまうと、それは完全にアウトですね。何かトラブルが起こったときにも、また好みで解決策を選んでしまいます。正しい判断ではなくなってしまうのです。この「好み」というのは、「欲」に似ていますが微妙に異なる心理です。「性向」かもしれません。
 
 それから、②「怒り(dosa)」にも気をつけましょう。これは分かりやすいですね。次は③「恐怖(bhaya)」です。恐怖感が心にあると、なすべき行動・判断ができません。最後は④「無知(moha)」ということです。ひとは「考えるのが面倒だから、こうしよう」と無知で判断しがちなのです。
 
 これら4つの偏見で、我々は真理・事実を捻じ曲げてしまうのです。現実から離れると、そこに幸福があるわけがありません。さらに不幸になってしまいます。ですから、お釈迦様は我々が持っている4つの偏見(洗脳)を、まず自覚し、それに気をつけ、偏見を取り払うようにと教えているのです。これで初めてセルフマネジメントができるのです。
 
 さらに加えて、五戒のうち殺生・偸盗・邪淫・妄語までを付け加えた8項目に気をつければ、お釈迦様が教える完璧なセルフマネジメントとなります。もう怖いものはないのです。いつでも正しい判断ができるようになるのです。