智慧の扉

2015年12月号

人生を幸福にアレンジメントする

アルボムッレ・スマナサーラ長老

「フラワー アレンジメント」というものがあります。日本では、「生け花」と言いますね。花屋さんが大量の花を買ってきます。買ってきた束の花は、ただの花であって何の美しさも感じません。その買ってきた花を、上手な人がアレンジメント・生けてみせるのです。

 ただの花だったのが、立て方や角度によって、私たちが観て美しいと思う作品が現れてきて、心に喜びを与えてくれるのです。

 その生けた花を抜いて、もとの束の花に戻すと、また何の美しさもなくなってしまいます。ですから、花の生け方に何か秘密があるのです。
 
 そのように私たちも、自分の人生をアレンジメントしなくてはいけないのです。人間で生まれたなら、私たちには何かしら良いところ(能力・才能)があります。しかし、ものの見事にアレンジメントできていません。正しく花を生けてないのです。それでは何の役にも立ちません。

 例えば10万円する花を束にし、ビニール袋に詰めて持ってきたとしても、何の美しさもありません。たとえ立派な花瓶があったとしても、その花瓶も役に立ちません。しかし、花瓶に合わせて華道家が花を生けると、これまた腰が抜けるほどのビックリするような美しい作品が現れてくるのです。
 
 ひとつひとつは特長のない花であったとしても、生けた途端それぞれが自分の美しさを演出しているように見えるのです。
 
 そこで私たちが理解するべきことは、「人間」という生まれは不幸ではないということです。誰しもが、いろんな能力を持って生まれてきています。その能力を正しく生かすべきなのです。持っている能力をきちんとアレンジメントすれば、人生はものすごく美しい幸福なものになります。
 
 お釈迦さまは私たちに「善行為をしなさい」と言います。善行為をすることで、私たちの持っている徳(能力)がキレイに整理整頓され、プロが生けた美しい作品のように、人生が美しく輝くことになるのです。「今日からいいことをしよう」と、ちょっと心を変えただけで、その日から人生はどんどん好転して、徳のある、幸福な、恵まれた、ツイている人間として成長していくのです。