智慧の扉

2016年6月号

業というガソリンを正しく燃やす

アルボムッレ・スマナサーラ長老

 カルマ・業というのは自分の思考がつくる結果です。あなたのこれまでの思考があなたのいまを作っているのです。あなたはそこから逃げられません。しかし、それからまた清らかな思考をして、道を変えていくこともできるのです。その変化するエネルギーを業といいます。思考の裏にある感情がすべてを決めています。感情の中に業があるのです。

 たとえば車はガソリンで動きますね。業はガソリンのようなものです。ガソリン自体には燃えることしかできません。しかしちゃんとしたところで燃やすと、車の燃料になるのです。このガソリンみたいなエネルギーが業で、それがこころの中にある。しかしそれは、思考パターンの枠内で燃えているのです。ですから思考パターンがすごく清らかなものだったら、業は正しい結果を出して燃えるし、思考パターンがおかしかったら、かなりヤバイ燃え方をするのです。

 ガソリンは環境に従って燃えるだけです。ガソリンを人の身体にかけて火をつけたら、その人がパッと北海道に行ってしまったということはあり得ません。ひどい火傷をおって焼け死ぬだけです。ガソリンを飛行機や自動車のエンジンに入れて燃やして、それから正しく運転すると、どこかよいところへ行けるのです。

 ガソリンは自分の仕事をしただけです。業というのはそのようなエネルギーなのですね。そのエネルギーは、こころの中で瞬間瞬間に生まれるものです。私たちはいまの思考で、次に何をするのか、次にどう生きるのかと決めているでしょう。たとえば今日の朝起きて、冥想会に行かなくてはと思考したでしょう。その思考の結果、あなたの身体が動いて、電車に乗ったりいろんなことをして、ここまで来たのです。ここまで来させたエネルギーは業です。あなたの思考がここまできちんと導いたのです。そこで思考が途中で混乱すると、たちまち迷子になってしまうのです。

 業について考える時は、ガソリンのたとえがいいのです。ガソリンは燃えてくれる、エネルギーを出してくれる。しかし、どこでどのように燃やすかというのは、私たちの思考次第です。ですから、業はつねに働いています。自分の気持ちが、自分の次の人生を作るのです。次の人生というのは、次の瞬間の人生でもあるし、来世の人生でもあるのです。