あなたとの対話(Q&A)

生きることは大変か

2018年9月28日

私は、たくさん仕事を抱えていて、ふだんの生活がたいへん忙しく、なかなか時間がとれません。
でも、このテーラワーダ仏教を知り、ぜひ自分でも実践してみたいと思い、ときどき時間を作って瞑想しています。
しかし、すぐに仕事のことが頭に浮かんできて、集中することがむずかしいのです。

なんでもかんでも、やりきれないほどの仕事を抱え込む方なのではありませんか?
会社の仕事、家のこと、町のこと、あれもやります、それも私がやりますと抱え込んでしまうタイプなのではないでしょうか。たくさんの仕事を抱え込むようになると、ひとつの仕事さえもうまくいかない。まず、時間がありませんから、どこか手を抜かなくてはならなくなってくるんですね。手を抜くようになると、心に落ち着きがなくなってきます。人からも批判される。「この間、頼んだものはどうなっていますか」と言われると、「ちょっと待ってください、明日やりますから」と言っておかなければならなくなる。
そのように、何でも自分でやりたい人というのが、ときどきありますが、何でも自分でやりたい人は全部やれるわけではなく、やれなくて心が混乱するし、他人にも迷惑をかけてしまうし、そのような状態では、客観的な確認というのはむずかしくなってくるのです。

このような人に仏教が言うのは、「自分の人生をできるだけ軽くしなさい」ということです。何でもかんでも自分でやらなくてはならないということはないはずです。自分にできるだけの仕事をして、人生を軽くした方がいいと思います。

商売の世界にしても、欲の世界ですから、いくらあっても足りないという法則で成り立っています。欲の世界というのは、本当は精神的な病気なのです。人間が生きるためには、こんなに並々ならぬ努力をする必要はないのです。人間は簡単に生きられるようにできているのです。

人間が簡単に生きられるものだなんて、とても信じられません。

人間の世界は、仏教では天界とほぼ同じ次元にあります。天界と違うところといえば、我々は病気になったりするし、歳もとる。それに仕事をしなくてはいけません。

仏典にある物語から推測すると、天国では、仕事をしなくてもよいし、歳をとることもない。わざわざ栄養をとらなくても、自然に存在することができる。生まれたときにはもう一人前で、そのままずーっと生きて、あるときパタッと死んでしまう。

人間の違うところは、小さく生まれて大きく育たなければならないし、どんどん育っていくと今度は歳をとって、死に至る。病気になることもある。それに、ただ待っていても食べるということはできません。ですから、仕事をしなくてはなりません。

しかし、それ以外のことは、天界も人間もほとんど同じで、どちらの世界にもトラブルはあるし、欲も憎しみもある。しかし、人間の世界では、天界にない特別な『欲』が働いているのです。

欲の世界の方程式というのは、いくらあっても足りないという方程式です。不思議な数学です。

1万円欲しいと人が思うと、1万円もらったところで満足するはずですけれども、やっぱり2万円ないとだめだということになっちゃうんですね。そして2万円もらったなら、やはり4万円、という風に希望がすっ飛んでしまうのです。食べるものが何もない人におにぎりを2つあげたら、それで「よかった」と言って食べますが、次はおにぎりではなくて親子丼が食べたいということになっちゃうんですね。親子丼をもらったら、今度は寿司が食べたい、ということになってしまいます。

このように「いくらあっても足りない」という状態では、欲しいものを追い求めても追い求めてもきりがなく、体がぼろぼろになるまで働いた挙句、何もやる暇がなくなってしまいます。それでは幸福に楽に生きることはむずかしいので、この「欲の世界の不思議な方程式」を変えなければなりません。しかしただ、それだけのことなのです。

本来、人間として生きることは、それほどむずかしいことではないのですね。それを私たちが、勝手に、むずかしいことにしているのです。私たち自身の手で、自分たちの世界を生きづらい世界にしているのです。

昔の人は余計な欲がありませんでしたから、かなり落ち着いていました。暇もいっぱいあったので、村の人たちを集めて祭りをして楽しんだり、穏やかに暮らしていました。今では、その祭りさえ、文化遺産のように扱って、それを人に見せて金儲けにつかっているのです。

とにかく、欲ばかり追うのではなく、お金にせよ健康にせよ、まあこれくらいでいいんじゃないかな…というリミットを決めて、楽になることで、客観的にものごとを観るためのこころの余裕が出てくると思います。

日常生活のなかで客観性を持つことができるならば、きっと人生の無駄が消え、仕事もうまくいき、智慧がゆっくり発達してくると思います。

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