施本文庫

お釈迦様のお見舞い

気づきと正知による覚りへの道  

アルボムッレ・スマナサーラ長老

6.「不苦不楽の感覚」の生起と「無明」の消滅

Tassa ce, bhikkhave, bhikkhuno evaṃ satassa sampajānassa appamattassa ātāpino pahitattassa viharato uppajjati adukkhamasukhā vedanā, so evaṃ pajānāti-uppannā kho myāyaṃ adukkhamasukhā vedanā.
Sā ca kho paṭicca, no appaṭicca.
Kiṃ paṭicca?
Imameva kāyaṃ paṭicca.
Ayaṃ kho pana kāyo anicco saṅkhato paṭiccasamuppanno.
Aniccaṃ kho pana saṅkhataṃ paṭiccasamuppannaṃ kāyaṃ paṭicca uppannā adukkhamasukhā vedanā kuto niccā bhavissatī ti.

比丘たちよ、もし、その比丘が、このように気づきと正知をもって、精進しつつ煩悩を炙りながら頑張っているときに、苦でもなく楽でもない感覚が生まれたら、彼は、このように知ります。
「まさに、私に、この苦でもなく楽でもない感覚が生まれた。
しかしながら、まさに、それは原因があって(生まれたものであり)、原因がなければ(生まれない)。
何が原因かといえば、まさに、この身体が原因なのだ(身体があるから、苦でもなく楽でもない感覚が生まれたのだ)。
しかしながら、まさに、この身体は無常であり、作られたものであり、原因があって現れたものだ。
ならば、まさに、無常であり、作られたものであり、原因があって現れたものである、身体を原因にして生まれた苦でもなく楽でもない感覚が、どうして常住になるだろうか」と。

So kāye ca adukkhamasukhāya ca vedanāya aniccānupassī viharati, vayānupassī viharati, virāgānupassī viharati, nirodhānupassī viharati, paṭinissaggānupassī viharati.
Tassa kāye ca adukkhamasukhāya ca vedanāya aniccānupassino viharato…pe…paṭinissaggānupassino viharato, yo kāye ca adukkhamasukhāya ca vedanāya avijjānusayo, so pahīyati.

彼は、身体についても、苦でもなく楽でもない感覚についても、無常であると観ています。
そのうちに消えてなくなるものだと観ています。
執着するものではないと観ています。
滅するものに捉われてはならないと観ています。
捨てるべきものと観ています。
彼が、身体についても、苦でもなく楽でもない感覚についても、無常であると観ていると、そのうちに消えてなくなるものだと観ていると、執着するものではないと観ていると、滅するものに捉われてはならないと観ていると、捨てるべきものと観ていると、身体と苦でもなく楽でもない感覚にある随眠(隠れている)無明の煩悩ですが、それがなくなります。

◆冥想の手引 Adukkhamasukhā vedanā随観法

それから身体に、苦でもない楽でもない感覚が生まれるのです。それもこれまでと同じように観察します。「これは身体から生まれた感覚なのだから、無常に決まっているのです」と。するとその感覚は、そのうちに壊れてしまうのです。
ちょっと薬が効いてくると、気分がよくなってくるでしょう。これで調子に乗ってはだめですよ。病気の人は調子がよくなっても冷静で、調子が悪くなっても冷静でいなければいけません。

苦でもない、楽でもない感覚の場合も同じように考えて、「無常です。原因で現れたものです。肉体のせいで現れたもので、肉体は壊れる。だから感覚も壊れるのだ。こんなものに囚われてはいけない。離れなくてはいけない」と思うことです。
  
そうなってくると、苦でもない楽でもない感覚に隠れている「無明」という煩悩(avijjānusayo)がなくなるのです。本人は修行者なので、意識的に働くこころの中で機能する煩悩はありませんが、随眠状態の煩悩(随眠煩悩)が現れる可能性だけは持っているのです。それがここで説明した観察方法でなくなるのです。
このようにしてお釈迦様は、貪瞋痴(欲・怒り・無知)の煩悩をなくす方法を説かれたのです。

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この施本のデータ

お釈迦様のお見舞い
気づきと正知による覚りへの道  
著者:アルボムッレ・スマナサーラ長老
初版発行日:2008年5月