施本文庫

ブッダの経営論

ビジネスリーダーの人間力 

アルボムッレ・スマナサーラ長老

リーダーになるための教え3:利行

三番目にいきます。アッタチャリヤー atthacariyā(利行)、これは「有意義な行為をする」という意味です。これは、反対の言葉で言ったほうがわかりやすいと思います。
つまり、無駄をやるなよということです。無駄話も、無駄な時間もなくす。
一人ひとりに何か役に立つこと、ためになることを教えてあげる。単純に命令するのではなく、親切に指導し、アドバイスして、無駄をなくすのです。

リーダーになるための教え4:同事

四番目が一番大事です。サマーナッタター samānattatā(同事)、これは「平等・仲間意識」という意味のお釈迦様の言葉です。
人はさまざまです。社長とはあまり一緒にいたくない、遠慮しますという人もいれば、時々は対等にしゃべりたがる人もいます。だから会社の立場がどうであっても、人間として接したほうがいいのです。論理的にいえば、世の中はみんな平等なのです。たまたま社会のシステムで管理する人、管理される人がいるのですが、それが絶対的なものではないのです。

我々の社会では、それははっきりしています。例えば、出家の人は仏教の社会では立場が上なのです。一般の在家の方々はみんな頭を下げて尊敬します。しかし私たちは微塵も上だと思ったことはありません。みんな平等だと思っています。ですからカトリック教会のシステムと違って、仏教の国々の人々は堕落しないのです。すごく悪いことをして、大変なことになるということは、システム的に起こらないのです。
それは出家も一般の人も対等な立場なので、社会に隠れて悪いことをして堕落することができなくなるからです。

社会ではいろいろな立場があるかもしれませんが、本当は、人間はみんな平等で、同じ気持ちを持っていて、平等な生命として相手を尊敬する、大事にする。これを同事といいます。

特に管理者、グループリーダーは、自我の気持ちを捨てて、みんな同じだという立場に立つことが必要なのです。
誰も非難されたくはないし、厳しく言われたくはないし、褒めてほしいし、応援してほしい。だからみんな一緒に頑張りましょうという感じで、平等であることを実行しなくてはいけません。

この四つが人間を管理する人にあるべき性格だと、お釈迦様が言われたことです。これを実行すると、自分も成長するし、周りも成長します。この四つを実行するために、人格的に向上しなくてはいけないのです。しかも、これをやっても何の副作用も起こりません。
会社の一番トップの人と一番下の人が一緒にベンチに座って、お茶でも飲みながらおせんべいを食べたからといって会社がつぶれますか。その人が会社に戻ってから言うことを聞かなくなると思いますか。社長もみんなと一緒にワイワイと楽しくご飯を食べて、楽しく生活して、ストレスを解消することができます。
ですから、一つも悪くならない、副作用のない、成長するための完全な方法なのです。

独裁者といわれる人たちは、あまり成功している人生だとは言えません。ニュースなどを見ているとそう思います。彼ら独裁者たちがどれほど人々の心を傷つけているか。どれほど強引にものごとをはこび、失敗をどれほど他人のせいにするか。実際のところ、成功者ではないのです。

例えば、北朝鮮の金正恩さんは自分と身内だけが贅沢をしていて、多くの国民は栄養失調です。日本の総理大臣は一年で辞める、だから日本の総理大臣は失敗者で、金正恩さんは成功者でしょうか。

あるいは、アメリカの経済問題で世界がかなり痛い目に遭っているでしょう。アメリカが世界一の成功者だとは私は思いません。力を誇示しすぎれば、テロの標的にもされますし、逆に危ないのです。
だから同事、平等でいいのです。問題は起こりません。どのような経営をするのかという本はいくらでもありますが、そんなものを読むよりは、工場へ行って「みんな頑張っているな」と一言、声をかけるほうが、よほど効き目があるのです。

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ブッダの経営論
ビジネスリーダーの人間力 
著者:アルボムッレ・スマナサーラ長老
初版発行日:2013年