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一生役立つブッダの育児マニュアル

親の「どうしたら?」と子供の「どうして?」に答えを出します 

アルボムッレ・スマナサーラ長老

Q6 なんで人は笑うんですか?

色々理由があります。生きるということは楽な仕事ではありません。苦しいものです。もしかすると笑いという行動は、その苦しみを和らげるために脳がやっている特別な行動かもしれません。笑うと、身体によいホルモンが分泌されて、肉体的、精神的疲労を和らげるのです。わざわざ笑わなくても、喜びを感じる時は同じ結果になります。動物は笑わないですが、喜びを感じます。うるさく笑うのは人間だけでしょうね。

人間の笑い方について、少々考えておきましょう。

(1)普通だ、常識だと思っているものと違うことが起こると笑ってしまいます。

テレビ、映画、漫画、漫才、コメディなどで笑うのは、普通と違うこと、常識と違うことをやっているからです。皆、他人を笑わせようとして、いろいろ工夫して常識と違ったことをして、コメディなどを作るのです。日常生活の中でも、何か少々「変なこと」をして、わざわざ笑うのです。このように強引に笑いをつくるのは人間だけです。人を笑わせることを仕事にして生活する人もいます。人間だけがこのような行為をしているのは、もしかすると、生きることが、動物たちよりも人間にとって苦しいものだからではないでしょうか?

(2)期待していたことがその期待どおりに起きたとき、欲しかったものをもらったときにも笑います。

何かを期待しているとき、心は苦しいのです。ハラハラドキドキしています。これもストレスです。欲しいものを得ると、ストレスも苦しみも解けて楽になります。ほおーっとします。そのとき、脳が刺激されて笑うのです。ストレスが消えるまで笑うのです。

(3)残忍な、冷酷な笑いもあります。

これは、自分が偉いと思って人をバカにして笑うことです。ストレスの固まりになって生きていて、自分には何もうまく出来ないくせに、他人の間違いを見て笑う。他人をけなして笑う。人の服装がちょっと変わっているだけで、身体が多少太っているだけで、少々勉強ができないだけで笑う。人の弱みを笑うことは、残酷で冷酷な人間がやることです。

動物でさえ、弱い仲間のことを心配するのです。人間が弱い仲間のことを笑うなら、その人の性格は動物以下です。そのとき普通の人は、一緒に笑って同じ仲間に入ってはいけません。無視すればよいのです。「人をバカにして、人をけなして笑ってはいけません」と言ってあげても、理解するほど能力がない場合もありますからね。これは性格の悪い人の笑い方なので、まねをするのは止めた方がいいのです。

(4)素晴らしい立派な笑いもあります。

他人が何かを成功したとき、自分のことのように「よかった、よかった」と喜びを感じて微笑みが出てくる。人々の優しさを見て、人が人を助けるのを見て、みな幸せでいるのを見て、なんとなく楽しくなって笑う。それは、人格的に素晴らしい人の笑いです。皆、このようなことで笑える、良い人間になった方がいいと思います。

人は、なんと言っても笑顔が好きです。人の笑顔を見たら、自分の心の苦しみも消えます。大人はよく子供を見て笑ったり、可愛がってあげたりしますね。子供はいつでも笑っているから、大人にとってはたまらないほど楽しいのです。大人の世界にある苦しみなど、すぐ消えてしまうのです。ですから、どちらかと言うと笑顔があった方がよいのです。皆に笑顔を見せるようにすることは良いことです。自分も楽しいし、人も楽しくなります。母に怒られるときでも、嫌な顔をしないで笑顔で聞いてあげると、母の怒りも瞬時に消えてしまいます。それは楽です。笑いがなければ人は生きていられないのです。

Q7 なんで人は泣くんですか?

期待がはずれたら泣きます。希望がかなわなかったら泣きます。あってほしくないことが起きたら泣きます。例えば誕生日にプレゼントをもらえると思っていたのに、親に用が出来てもらえなかったら泣いちゃいます。可愛いペットが、死んで欲しくないのに死んでしまったら、泣きます。叱られたくないのに叱られると泣きます。

簡単に言えば、嫌なことがあったら泣くのです。「泣く」ということは、本当は「怒り」です。ですから、泣くことは身体に悪いのです。ペットが死んで悲しくて泣くと、「優しい子ですね」と皆が言うかもしれませんが、結局は「早く忘れなさい」と言うのではないでしょうか? 「何が起きてもよく泣く人は『優しい人間』だ」と思っているみたいですが、本当はただ怒って泣いているだけです。身体にも心にも良くないのです。「泣き虫」はよくないことです。

また別の泣き方もありますね。「感動の涙」です。サッカーの試合で日本が勝ったら涙が出ます。本などを呼んでも、主人公があらゆる苦労を乗り越えて幸福になる場面で、目に涙があふれて来ます。これは「うまくいった」という喜びです。ほんものの「泣き」ではないのです。物事がうまくいったら、笑うか泣くかどちらかですね。笑えるところだったら笑う、笑うだけですまない感動の場合は泣く。それだけです。自分のことでも、人のことでも関係なく、うまくトラブルを乗り越えて成功した時に目に浮かぶ涙は、「泣き」ではなく「喜び」です。それは悪い涙ではありません。感動して泣くときも、身体の働きは笑うときと同じです。ストレスが溜まって溜まって、心が固くなっていくと、身体も硬直してしまいます。それでその問題が無事解決すると、ストレスが解放されます。そのときですね、泣くのは。

Q8 お金はどんなものですか?

ただの道具ですよ~。ものやサービスを交換するとき、その量を換算するための道具です。人が一日働いてカボチャを一つもらったとしましょう。それでその人のサービスに充分お返ししたことになるかどうか分からないのです。それで、「お金なら、一日働いたら何円か」「カボチャ一個は何円か」と数字で理解する。それで、一日働いてカボチャを一個もらった人は、損したか得したかがわかるのです。

人間は「お金がすべてだ」と思っているのですね。お金のために人殺しも、強盗もします。嘘も言います。自殺もします。でもそれは、考え方がまちがっています。幸福に生きることが何よりも大事です。皆仲良く平和で生きることが大事です。お金は、その目的を達するための道具にすぎないのです。幸福に、平和に、仲良く生活するためには、お金以外に必要なものがたくさんあります。この世では、それらのもの、つまり食べるもの、着るもの、住むところ、薬などをもらう為に、どうしてもお金が必要になります。しかし、それはただの道具で、人生のすべてではありません。

人はお金を儲ける方法より、立派な人間になることを学ぶべきです。お金があっても、悪い人間だったら、悪いことをして自分も不幸になるし、他人をも不幸にするのです。お金は人を悪魔にしてしまうほどの魔力を持っているので、しっかりと「お金は道具だ」「それ以外なんでもない」と思ってもらわなくてはならないのです。

「お金が欲しい、お金が欲しい」とばかり思っている人は、世の中で一番暗い、危ない人々です。そのような人に限って、お金も寄ってこないのです。「良い人間になりたい、優しい人になりたい、自分も楽しんで他人も楽しませながら生きてみたい、人の役に立つ人間になりたい」と思ってがんばる人は立派です。その人はお金で苦労しないのです。

Q9 今何を勉強すればいいのですか?

まだ小学生だから、教えてもらえるものは何でも勉強すればよいでしょう。人間の頭というものは、いくら勉強しても満杯になることはありません。破裂もしません。わいわいと楽しく勉強すると、何でも頭の中に入ります。嫌で嫌で仕方なくて勉強すると、頭には何も入ってこないのです。人生は短いし、勉強することはたくさんありますから、高校生になると何か専門分野を決めなくてはならなくなりますね。いろんな勉強の中で自分にとっては簡単で楽にできるものがあります。苦労しなくても出来る勉強があります。高校生になったら、それを選んで勉強すればよいのです。

しかし、勉強は人生のすべてではありません。何を勉強しても、悪い人間であるなら、何の役にも立たないのです。勉強は何か仕事を見つけるためのものです。人は死ぬまで、皆と一緒に仲良く生きていなくてはならないのです。ですから「良い人間になること」は、必ず勉強しなければならないことです。
勉強が出来なくても生きられますが、良い人間にならないと、平和で幸福に生きることはできないのです。ですから今は、良い人間になることを勉強すればよいと思います。

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一生役立つブッダの育児マニュアル
親の「どうしたら?」と子供の「どうして?」に答えを出します 
著者:アルボムッレ・スマナサーラ長老
初版発行日:2004年8月