智慧の扉

2008年5月号

ブッダが説かれた第一のレッスン

アルボムッレ・スマナサーラ長老

人間、生きるのは楽ではありません。生きるためには、能力が必要です。動物の社会だって、それぞれの能力を使って、問題を解決しつつ生きているのです。

われわれは、欲望がありすぎて、妄想ばかりで、自分の「能力の器」に穴を開けているのです。それで、これまでできたこともできなくなる。持っていた能力もなくなって、人生の歯車が狂ってしまうことも珍しくありません。

時代に、社会情勢にあわせて新しい能力を開発することは、生命にとって不可欠なのです。能力があれば、なんとか生きてられます。われわれは、お寺に通って「能力開発」しなければいけません。仏教は、人の持っている能力をとことん向上させる教えなのです。

俗世間で言っている、「能力開発」は仕事中心です。とても狭いのです。ただ身体の動かし方を習うだけで、そこには人間の向上がありません。仕事から離れたら役に立たない。だから、環境が変わると生きられなくなるのです。

ブッダは、人間としての能力の向上を説いています。

「過去」と「将来」という妄想の迷路から抜けて、現在を生きること。

これがブッダが説かれた第一のレッスンです。「いまの自分に気づく」ことが、能力向上の第一歩、智慧の開発の第一歩です。妄想を止めるために精進するのです。心を暴走させることなく、いまの瞬間に付けておくことです。