智慧の扉

2009年4月号

「いま」失敗しないこころを育てる

アルボムッレ・スマナサーラ長老

 ブッダの教えはいわゆる「宗教」ではありません。ブッダは人間(生命)がこの世で成功して幸福に暮し、さらに人間のレベルを超越して最終的な目的(解脱・涅槃)に達するまでの具体的な「生き方」を説かれたのです。それは誰にでも理解できる、また実践・実行できるものです。
 
 私たちはなぜ幸福に生きられないのでしょうか。原因の一つは、「いま・ここ」を離れた夢や希望に溺れていることにあります。スケール大きく生きるのはいいのですが、先のことをあれこれ考えたら、必ず「いま」失敗します。

 一年後、十年後のことなど分かるはずもない。まして終わった過去など放っておきましょう。ただ今日を忙しく、失敗しないように生きると決めることです。すると、私たちのこころはスーッとリラックスします。今日一日ならば、何に挑戦すべきか、はっきりします。だから簡単に成功できるのです。成功すると、生きている充実感を得られるのです。今日したことに満足できるか、ニコニコと笑顔で布団に入れるかと、一日単位でチェックしてみてください。「けっこう頑張りました。充実感をもって生きられました」と自信を持てるならば、その人はブッダの道を歩んでいます。

 それぞれの現場で、目の前の仕事に一つずつ挑戦して生きる人のこころには、極限的な安らぎが生まれます。過去について悩まないこころ、まだ来ぬ将来に心配しないこころ、今日を穏やかに生きるこころ。このようなこころを育てなさいと、ブッダが語るのです。

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