智慧の扉

2010年3月号

仕事とは何か?

アルボムッレ・スマナサーラ長老

人間として生まれたならば、仕事をするのは呼吸と同じように、当たり前のことになっています。では、仕事とはいったい何でしょうか?

仏教の立場で答えれば、それは「他の生命の役に立つこと」です。

例えば、美容師さんの仕事は、女性を美しくすることです。美容師はその仕事を通じて、女性に自尊心、社会のなかで堂々と生きていられる心の安定を与えているのです。男性から見ると「なにやってるの?」と思うかもしれませんが、女性に心の安らぎを与えているのだから、生命の役に立っているのです。

セキュリティ会社がいくら頑張っても、泥棒には入られます。しかし「警備されている」という安心感なしに我々は職場を離れられないのです。セキュリティ会社も、人々に安心感を与えることで潰れずにいます。

このように、他の生命の役に立つことが「仕事」です。

ですから、たくさん人類のために仕事したならば、人類も皆さんを「生かしてくれる」のです。もちろん、誰も褒めてはくれませんが、生かしてもらえたならば立派なものです。「役に立つ」は商売でも鉄則です。

企業が何か商品を売る場合は、人の役に立つことを最優先にしなければいけないのです。目先のデザインを変えて若者を騙そうとしても、会社が潰れるだけです。

個人も企業も、自分たちの仕事がどれだけ役に立つかと常に考えることです。人の、生命の、役に立つことを第一に考えて働くならば、みるみるインスピレーションが湧いてくるはずです。