智慧の扉

2010年8月号

幸福の暗証番号

アルボムッレ・スマナサーラ長老

業(カルマ)について、理解しようと思わないで下さい。「行為には結果がある。だから、悪いことは止めよう」くらいでいいのです。私は僧侶なので、業のことをかなり勉強していますが、その勉強によって得た特権は何もありません。生きている上での問題は皆様と同じ。私にしても、皆様にしても、「悪いことはしてはいけない」というだけです。

業について人々が知るべきならば、釈尊がきちんと教えているはずです。でも釈尊は、「業について考えると頭がおかしくなるのでやめなさい」と言っているのです。私たちは、ただ考えるだけでも業がたまります。ですから、悪業も、善業も、無量に持っています。

業の貯金はうなるほど持っていても、引き出すための暗証番号は知らないでしょう? 暗証番号はふたつ。不幸口座から引き出すか、幸福口座から引き出すか、によって変わります。

不幸口座の暗証番号は、みんなよく使っています。欲、怒り、嫉妬、落ち込みです。それで、悪不幸口座からいくらでも悪業を引き出せます。

善業口座の暗証番号は、四桁です。慈・悲・喜・捨です。

ですから、一週間くらい「慈悲の冥想」をしてみてください。それで人生は好転するはずです。幸福口座に無量の善業があるのに、私たちは、いつも不幸口座ばかり使っているのです。「生きとし生けるものが幸せでありますように」と念じて生きれば、過去の善業を引き出して、そして新しい善業を積んで、気楽に幸せに生きられます。

精神的に病気になるのは、妄想の結果です。汚い妄想は止めた方がいい。その代わりに苦労してでも、慈しみの思考で生きたほうがいいのです。